15年間住宅設計に関わる仕事をして、なんとなく考えていたことの数々
「家とはなにか」
「家についてどう考えるか」
「住宅と家の違い」
改めて、どういうことだったのか考察してみたいです。
日々のくうねるだす
住宅とは何か?
住宅とは、人が住むためのものです。
では、人はなぜ住宅を必要とするのでしょうか。
最初の理由は安全のためです。
人は雨風や暑さ寒さから身を守り、安全に暮らすために住まいをつくってきました。
人間が生存の安全を確保するのに必要なもの、外敵や気象に脅かされずに生存に必要な活動ができる場所が住宅です。
昔から「くう・ねる・だす」と言われるように、人の暮らしの基本は食べる・眠る・排泄することです。
毎日の生活の営み(いわゆる「くう・ねる・だす」)の舞台となるところ、一人で安心して居続けられる場所、いってみれば、人間にとっての巣穴のようなものです。
元々はそういうものだったはず。
そういう面でみると、住宅の存在理由で根本的なところは誰にとっても同じですね。
生存のための環境を確保し、生きていくうえで必要な日常のあれこれを滞りなくできるように。
住宅が必要な第一の理由はそこで、これは万人共通です。
実際、生活の流れを考えたら朝起きてから夜眠るまで、細々とした違いはあれども大きな項目では誰もが同じように生きているのです。
ところで
【住宅】は人が住むための建物です。
一方で【家】という言葉には、建物だけでなく家庭や家族、家名など、暮らしそのものを表す意味も含まれています。
「住宅」という殻に対して、中身を詰めていくと「家」になるという感じでしょうか。
では「住宅」はどのように「家」になっていくのか。
そんなことも考えながら次項から平面計画の話をあれこれしてみようと思います。
毎日の「くう・ねる・だす」は、誰にとっても共通しています。
けれど、その先の暮らし方は一人ひとり違います。
家の間取りづくりは、その「違い」を見つけるところから始まります。
常識を絶対視しないこと
まずは誰にとっても共通している毎日の「くう・ねる・だす」について、拾い出しをしてみます。
眠る場所:人ひとり、横になれる空間(寝具一式)
食べる場所:座って食事できる程度の広さ(食卓、椅子、食器 料理もするなら台所)
排泄する場所:設備機器の置ける場所 独立した個室
どれも設備関係で機能のあるもの、使用目的がはっきりしていて住宅には必要不可欠なものです。
最低限としてはこんなものでしょうか。
「立って半畳、寝て一畳」とは良く言ったものです。
それぞれに設置されるべき設備・道具類はどれも人間工学的に研究を重ねて寸法も出されており、万人に共通する住宅のコアみたいなものであるといえるでしょう。
日常で使うものの目的、寸法は一定で時代によって変化することはあるけれど必要なもの自体は昔から変わらないものです。
まずはコア部分を確保して、使い方、使い勝手、頻度、重要性から考察を重ねていきます。
一般的に住宅設計現場でよくある、該当敷地に適当なモデルプランを置いて肉付けしていくやり方は、ありきたりでつまらないと思われるかもしれませんが、最初のとっかかりとしては間違ってはいません。
こういうモデルプランには最低限必要な生活設備が揃ってコンパクトに上手くまとめられているので、最初はこういうところから始めるのだと思って眺めれば、目の前のモデルプランに自分はどのくらい当てはまっているか、何を足して何を引きたいか、いろいろ見えてくるものです。
モデルプランは、多くの人が70点と思えるようにつくられています。
しかし、あなたにとって100点とは限りません。
常識は参考として助かるし下敷きにもなるけれど絶対ではありません。
モデルプランは答えではありません。
自分の暮らしを考えるための「たたき台」です。
そこから何を残し、何を変え、何を加えるか。
その積み重ねが、自分だけの間取りになっていきます。
モデルプランに含まれていないものが自分のオリジナルです。
実際の日常行動の見直しから始めよう
最初にモデルプランを見たら、一度自分がその中で生活することを想像してみましょう。
眠るための場所として寝室が設定されているから、朝はそこから始まります。
朝目覚めて最初に行くのはお手洗い?洗面?それとも浴室?その前に着替え?
あるいは台所に直行することもあり?
または朝刊を取りに玄関先まで出ていく?
もしかしたら朝は目覚めても当分起き出さずに布団の中でごろごろしている?
一日の始まりの動きひとつ取っても、人によって違いがあります。
自分の動きがスムーズに想像できるプランになっているでしょうか?
そういう日常生活の動きはひとりひとり違って当たり前なのだから、最大公約数的なモデルプランに合わせるのではなく、自分に合わせてプランを変えていきます。
もちろん問題なければそのままで構いません。
定番の中にも自分に当てはまるものと当てはまらないものがあります。
住宅は外身(殻)で、中身をつくるのは住み手です。
朝だけではありません。
洗濯物を干すとき、買い物から帰ってきたとき、来客があったとき、休日に趣味を楽しむとき。そうした何気ない動きも、間取りを考える大切なヒントになります。
家にいる間のタイムスケジュールをまる一日ぶん、休日と平日、見直して動線を確認してみましょう。
改めて見直すと、自分の生活する上での動きは意外と把握していないものです。
自分は非常に個性的な生活をしていてモデルプランは全く用がない、という人でも、ある程度は万人に共通する生活パターンを持っています。
玄関→収納→洗面、キッチン→洗濯など、基本となる考え方です。
これらについて、最初は決まったものからのスタート、汎用性の高い最小限のパーツを集めてつなげる(最小限から徐々に増やしていく)ということには変わりありません。
「最初は決まったものから」というと「つまらない」と思われるかもしれませんが、世の中に全くのゼロスタートというものはほぼ無く、何事も決まり事から始まるものです。


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