古民家の耐震性能は本当に弱い?伝統構法と現代耐震基準の違い
古民家と聞くと、どのような風景を思い浮かべるでしょうか。里山に建つ茅葺き屋根の家や、格子窓と土壁が並ぶ町並みに溶け込む町家など、どこか懐かしさを感じさせる住まいを想像する方も多いでしょう。近年は古民家に住みたい、あるいはリフォームして活用したいと考える人が増えています。
しかし同時に、「古民家は地震に弱いのではないか」という不安の声も少なくありません。日本は地震大国です。古民家の耐震性能や耐震補強について正しく理解しておくことはとても重要です。
一般的に古民家とは、昭和25年(1950年)の建築基準法制定以前に建てられた伝統構法の木造住宅を指すことが多いとされています。築50年以上という基準で語られることもありますが、単に古いだけでなく、構法や素材、地域性を備えている点が特徴です。
「古民家=地震に弱い」と単純に言い切ることはできません。実際、木造建築は適切に維持されれば長寿命です。歴史的建築物が現存していることが、その一例といえるでしょう。
ただし、伝統構法と現代の耐震設計の考え方には違いがあります。伝統構法は柱と梁で骨組みをつくり、重い屋根を載せて全体を安定させる構造です。一方、現代の耐震設計は地震時の横揺れに対抗するため、耐力壁の量を計算して設計します。
そのため、壁の少ない伝統構法の建物は、現代の壁量計算に当てはめると不利な数値が出ることがあります。また、長い年月による劣化や過去の災害の影響が残っている場合もあり、それが耐震性への不安につながります。
気になる古民家がある場合は、まず耐震診断を受けることが大切です。
古民家の耐震診断と耐震補強の方法
古民家の耐震補強を検討する際、最初に行うのが耐震診断です。耐震診断では、基礎の状態、柱の傾き、接合部の緩み、壁の劣化状況などを確認し、建物の耐震性能を総合的に評価します。
実務でも感じるのは、「伝統構法を現代基準にどう当てはめるか」を丁寧に説明することの重要性です。数値だけでなく、建物の特徴を踏まえた判断が求められます。
自治体によっては、耐震診断や耐震補強設計に対する補助制度を設けている場合があります。いきなり工事を依頼するのが不安な場合は、まず自治体の相談窓口を利用すると安心です。
耐震診断の結果、補強が必要と判断された場合、古民家の耐震補強には次のような方法があります。
・柱の補強や交換
劣化や損傷のある柱を補修・交換し、構造体を安定させます。
・壁の補強
構造用合板の追加、筋交いの設置、土壁の補修などにより耐力を高めます。
・接合部の補強
金物や制震ダンパーを用いて、柱と梁、柱と基礎の接合部を強化します。
・基礎の補強
無筋基礎の場合は補強や増設を行い、建物全体の安定性を高めます。
・曳家やジャッキアップ
基礎がない場合には、建物を持ち上げて新たに基礎を設ける方法もあります。
これらを建物の状態に応じて組み合わせることで、古民家の耐震性能を向上させることが可能です。
古民家の耐震補強で失敗しないために知っておきたいこと
建築基準法は大地震のたびに改定され、住宅の耐震基準も強化されてきました。築年数の長い建物は古い基準で建てられているため、現代住宅と比べると耐震性が低いケースもあります。
しかし、古民家の耐震補強を進める際には注意が必要です。現代基準に完全に合わせようとすると、大規模な工事となり、建物の佇まいが大きく変わってしまうことがあります。
たとえば、屋根を軽量化したり、壁を大幅に増設したりすることで数値上の耐震性能は向上しますが、それによって古民家の魅力が損なわれる場合もあります。
耐震性能の数値だけを追うのではなく、「この古民家でどのように暮らしたいのか」を明確にすることが重要です。そのうえで、伝統構法に理解のある専門家に相談し、バランスの取れた耐震補強計画を立てることが望ましいでしょう。
複数の専門家に相談し、自分の希望を丁寧にくみ取ってくれるパートナーを選ぶことも、古民家リフォーム成功の鍵となります。
まとめ
古民家に暮らすことは、単なる住まい選びではなく、歴史や文化を受け継ぐ選択でもあります。その一方で、現代の生活に合わせるためには適切な改修が必要です。
古民家の耐震性能を正しく理解し、必要に応じて耐震診断や耐震補強を行うことで、安全性と魅力を両立させることができます。
まずは現状を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。耐震診断は、その第一歩となります。


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